クラリネット・コンサート
プログラム
ボザ(1905-1991) Eugène Joseph Bozza
ブコリック(1949) Boucolique pour clarinette et piano (1949)
ボザはフランスの作曲家。パリ音楽院でジャック・イベールらに師事、作曲・指揮およびヴァイオリンを学んだ。非常な多作家で、交響曲・カンタータ・声楽曲・オペラ・協奏曲など、ほぼ全てのジャンルを手がけた。
管楽器のための作品の多くはパリ音楽院の入試または卒業試験のための課題曲であり、この作品もそのひとつ。作曲は1949年。クラリネットのもつ華やかな光彩を最大限に表現することが求められる技巧的な作品。
ブラームス(1833-1897) Johannes Brahms
クラリネット・ソナタ第1番 ヘ短調 作品120-1
Sonate für Klavier und Klarinette Nr.1 f-Moll op.120-1
第1楽章 アレグロ・アパッショナート Allegro appassionato
第2楽章 アンダンテ・ウン・ポコ・アダージョ Andante un poco Adagio
第3楽章 アレグレット・グラツィオーソ Allegretto grazioso
第4楽章 ヴィヴァーチェ Vivace
ブラームスは、晩年、名クラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトの演奏に触発されて、一時は衰えた創作意欲を再び取り戻し、クラリネット三重奏曲op.114(1891年)、クラリネット五重奏曲op.115(1894年)、クラリネット・ソナタop.120(第1番ヘ短調・第2番変ホ長調の2曲、1894年)と、立て続けにクラリネットのための傑作を生み出した。クラリネット・ソナタop.120は、ブラームスが完成した最後のソナタ作品でもある。初演は、1895年1月、ウィーンでミュールフェルトのクラリネットとブラームス自身のピアノによって行われた。
曲は、ブラームス晩年の孤高の心境と諦観をにじませつつ、ときおりロマンティックな情熱が噴き出す。なお、第1楽章冒頭には自身の作品1である「ピアノ・ソナタ第1番」の第2楽章の主題(C-F-E♭-D♭)が引用されている。ブラームスはクララ・シューマンへの手紙のなかで、このことを「蛇が尾を噛んで、環は閉じられたのです」と語っている。
休憩20分
ロヴレグリオ(1841-1907) Donato Lovreglio
ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」のテーマによる幻想曲
Verdi “La Traviata” Fantasia da Concerto per clarinetto e pianoforte
ロヴレグリオは、南イタリア・バーリ出身の作曲家。主として木管楽器のための作品を作曲した。この作品は、ヴェルディ(1813-1901)の代表作のひとつ、「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」の主題による変奏曲。
オペラは、アレクサンドル・デュマ・フィスによる小説「椿姫(La Dame aux cameliasの訳)」を原作としている。このため、日本では原作小説と同じ「椿姫」のタイトルで親しまれている。しかし、オペラの原題「ラ・トラヴィアータ」の本来の意味は「道を誤った女」。娼婦ヴィオレッタと青年貴族アルフレードの純愛とその悲劇が充実した音楽で表現されている。第1幕で歌われる「乾杯の歌」はなかでも有名。
シュトックハウゼン(1928-2007) Karlheinz Stockhausen
友情に(1977) In Freundschaft für Klarinette(1977)
シュトックハウゼンは、ドイツの作曲家で、第2次世界大戦後の前衛音楽を主導。ピエール・ブーレーズ(フランス)、ルイジ・ノーノ(イタリア)とともに「前衛三羽烏」と呼ばれたこともある。
この作品は、クラリネット奏者でシュトックハウゼンの実質的な3番目の妻であるスザンヌ・スティーブンスの誕生日の贈り物として、1977年に作曲された。今や管楽器のコンクールの課題曲に選ばれるほど演奏頻度の高い作品。
高音域・中音域・低音域の3つの層による疑似対位法による作品で、音程・リズム・音価のすべてで正反対の性格をもつ(しかし同一の素材を起源とする)高音域と低音域のメロディーが、中音域へと歩み寄っていく構成。視覚的にも楽しめる作品である。
ホロヴィッツ(1926-) Joseph Horovitz
クラリネットとピアノのためのソナチネ(1981)
Sonatina for clarinet and piano(1981)
第1楽章 アレグロ・カルマート Allegro calmato
第2楽章 レント・クアジ・アンダンテ Lento quasi andante
第3楽章 コン・ブリオ Con brio
ホロヴィッツは、ウィーンに生まれ、1938年にイギリスに移住、オックスフォード大学で音楽と言語学を学んだ後、英国王立音楽大学で作曲を学んだ。
現代作品でありながら、古典的な3楽章形式、しかも第1楽章はソナタ形式をとっている。メロディーとリズムにジャズやポピュラー音楽の影響を受けており、ハーモニーは明るく、聞きやすい。クラリネット奏者、ピアニストの両者に高度な技巧を要求する作品。