2024.12.04 Wed
関市
児玉桃

メシアン「鳥のカタログ」

プログラム

メシアン(1908-1992)
Olivier Messiaen
「鳥のカタログ」
Catalogue d’oiseaux

20世紀を代表するフランスの作曲家オリヴィエ・メシアン。敬虔なカトリック教徒であったメシアンは、1931年(22歳)から終生、パリ9区・聖トリニテ教会のオルガニストとして活躍、また類い稀な博識をもつ神学者でもあった。
メシアンは、1940年代末から1950年代初めにかけて前衛音楽に向かうが、後にこれを不毛として、自然のなかにある音楽、鳥の歌による作品の探求を開始する。鳥類学者としても知られるメシアンは、世界中で鳥の鳴き声を採譜し、これを独自の音楽世界にまで高めていった。ピアノと管弦楽のための作品「鳥たちの目覚め(1953)」、同「異国の鳥たち(1956)」、そして独奏ピアノのための超大作「鳥のカタログ(1956-58)」が作曲されることになる。
メシアンは、生涯をかけて独自の音彩とリズムを追求した。その代表作品は、「世の終わりのための四重奏曲(1941)」(第2次世界大戦中、ドイツ軍の捕虜となった際、収容所内で作曲・初演されたことで有名)、「アーメンの幻視(1943)」、「幼子イエズスに注ぐ20の眼差し(1944)」、「トゥランガリーラ交響曲(1946)」、オペラ「アッシジの聖フランチェスコ(1983)」、「彼方の閃光(1992)」など。
なお、メシアンはパリ音楽院の教授としてブーレーズ、シュトックハウゼン、クセナキスなどを教えた。

「鳥のカタログ」は、全7巻13曲からなる。それぞれの曲は、フランス各地の代表的な鳥の名前を標題にしているが、仲間の鳥も合わせて全部で77種類の鳥の歌が、棲息地の風景、時間の移り変わり、静寂、気温、光と翳の変化などとともに音楽化され、大自然の色彩とリズムが饗宴する。
「小鳥こそ自由のシンボルだと思います・・・私は世界各地の民謡に深い賛美の念を抱いていますが、たとえどんなに歌心の豊かなものであっても、人間の音楽には鳥の歌声のような至上の自由さをもつメロディやリズムを見いだすことはできないと思います」(メシアン)。

「鳥のカタログ」は演奏に3時間を要する大作です。本日は全13曲のうち8曲(太字で示してあります)が演奏されます。

<第1巻>
第1番 キバシガラス Le Chocard des Alpes (Coracia graculus)
第2番 キガシラコウライウグイス Le Loriot (Oriolus oriolus)
第3番 イソヒヨドリ Le Merle bleu (Monticola solitarius)
<第2巻>
第4番 カオグロヒタキ Le Traquet stapazin (Oenanthe hispanica)

(休憩20分)

<第3巻>
第5番 モリフクロウ La Chouette hulotte (Strix aluco)
第6番 モリヒバリ L’Alouette Lulu (Lullula arborea)
<第4巻>
第7番 ヨーロッパヨシキリ La Rousserolle effarvatte (Acrocephalus scirpaceus)
<第5巻>
第8番 ヒメコウテンシ L’Alouette calandrelle (Calandrella brachydactyla)
第9番 ヨーロッパウグイス La Bouscarle (Cettia cetti)
<第6巻>
第10番 コシジロイソヒヨドリ Le Merle de roche (Monticola saxatilis)
<第7巻>
第11番 ノスリ La Buse variable (Buteo buteo)
第12番 クロサバクヒタキ Le Traquet rieur (Oenanthe leucura)
第13番 ダイシャクシギ Le Courlis cendré (Numenius arquata)

プロフィール

児玉桃
ピアノ

バッハからメシアンを含む現代作品まで、幅広いレパートリと豊かな表現力で国際的に活躍する。
幼少よりヨーロッパで育ち、パリ国立音楽院に学ぶ。1991年、ミュンヘン国際コンクールに最年少で最高位入賞。
その後、ケント・ナガノ指揮ベルリン・フィル、小澤征爾指揮ボストン響、モントリオール響、ベルリン・ドイツ響など、世界のトップ・オーケストラと共演。シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団とのアジア・ツアー、ウィーン八重奏団との日本ツアーなど、キャリアを築く。
2004年5月、名古屋フィルとのヨーロッパ・ツアーでメシアン「トゥランガリーラ交響曲」を演奏。イタリアではペルトの新作協奏曲をイタリア国営放送(RAI)響と共演。11月にはロジャー・ノリントン指揮シュトゥットガルト放送響とのドイツ・日本ツアーでも成功を収めた。
2005年、南仏ラ・ロック・ダンテロン音楽祭に参加。「ショパンの芸術の真髄とも言える熱狂的な演奏・・・」(ル・モンド紙)と絶賛された。
2006年4月、北ドイツ放送響の定期演奏会で細川俊夫「月夜の蓮」(世界初演)とモーツァルトのピアノ協奏曲を演奏。12月には小澤征爾指揮水戸室内管の定期演奏会でも同企画で演奏。いずれも高く評価された。
2008年6月、再び細川俊夫「月夜の蓮」をもって水戸室内管のヨーロッパ・ツアーに参加。8月にはルツェルン音楽祭で細川俊夫の新作「時の花」(児玉桃のために作曲された)を世界初演。さらに、メシアン生誕100年を記念して「児玉桃メシアン・プロジェクト2008」を敢行。「幼子イエズスに注ぐ20の眼差し」「鳥のカタログ」「世の終わりのための四重奏曲」など、5回にわたるシリーズ公演を行い、新聞・雑誌等で絶賛された。
「ドビュッシー:impressions」「ショパン:ピアノ作品集」「メシアン:幼子イエズスに注ぐ20の眼差し」などのCDがリリースされている(オクタヴィア・レコード)。
パリ在住。